【論文紹介】Tregの抑制能にTCRが必要(1)

今回紹介するのは以下の論文です。

Vahl JC, Drees C, Heger K, et al. Continuous T cell receptor signals maintain a functional regulatory T cell pool. Immunity. 2014;41(5):722-736. doi:10.1016/j.immuni.2014.10.012

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1074761314003884

Summary

末梢にいる成熟したT細胞が常に受け取っている、

自己ペプチド-MHC複合体を介したTCRシグナル、basalシグナルの話です。

前回まで紹介していた論文(パート1→https://statisticsschool.com/?p=1812)では、

Tconvの解析を主眼に置いていましたが、今回はTregが主人公です。

TCRを遺伝子改変で除去する、という手法をとっていますが、

これは以前紹介した論文(パート1→https://statisticsschool.com/?p=1675)と似た手法です。

Tregだけでなく、全てのTCRをノックアウトしているという点や、

ノックアウトしてからしばらく時間が経過したものを見ているという点が異なっています。

(これだとシグナルの有無だけを見ていて、シグナルの強さは見られていないように感じますが…)

筆者らは、以下の事実を発見しました。

  • Tregの抑制能はTCRに依存する
  • Tregのサブセットに特徴的な遺伝子の発現は、TCRに依存する
  • Tregのメチル化状態はTCRに依存しない
  • TregのFoxp3発現はTCRに依存しない←以前紹介した論文でも示されていた内容
  • Tregの活性化にTCRが必要←以前紹介した論文でも示されていた内容

Introduction

自己反応性が中程度に高い細胞がTregに分化する現象ってagonist selection(アゴニスト選択)って言うんですね!知らなかった…

分化途中にあるTregが、Treg特徴的な転写因子であるFoxp3を発現するのにも、Treg特徴的なメチル化のパターンを獲得するのにも、TCR刺激は必要です。

しかし、末梢のTregにとってTCRがどのように重要かはわかっていませんでした。

筆者らは、Tregの活性化、ホメオスタシス(恒常性維持)、免疫抑制能に必要であると主張しています。

以下、先行研究の結果です。

  • 胸腺のみでMHCを発現するような遺伝子改変を行うと末梢ではMHCが発現しなくなりますが、

   末梢でのCD4+CD25+細胞の割合は変化しなかったようです。

  • 矛盾する結果として、樹状細胞だけでMHCを欠損するとTregの数も割合も現象したと言う報告があります。
  • TCRシグナルの下流にあるZAPに変異を入れ、シグナル伝達を弱めても、

   末梢のTregの数は減らなかった、と言う報告もあります。

  • TregにおけるFoxp3発現の維持と生存にはIL-2が必要です。

次回はResultに入っていきます。

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