【論文解説】Tregが末梢で生き残るためにはTCRが必要(6・最終回)

今回紹介するのは以下の論文です。

Levine, A., Arvey, A., Jin, W. et al. Continuous requirement for the TCR in regulatory T cell function. Nat Immunol 15, 1070–1078 (2014). https://doi.org/10.1038/ni.3004

https://www.nature.com/articles/ni.3004

前回の記事はこちら:【論文解説】Tregが末梢で生き残るためにはTCRが必要(5)

Fig 6

タモキシフェン投与依存的にTregでIRF4をKOしようとしてもうまくいかない

IRF4に筆者らは注目しました。

IRF4はTregにおけるTCRシグナル伝達の下流に存在する遺伝子です。

IRF4は、CD44highの活性化した細胞でのみ発現していますし、TCRのKOによって発現が低下します。

先行研究でわかっていることとしては、

  • TregのみでIRF4をKOすると、2型の炎症性サイトカインによる激しい自己免疫疾患を発症する

   炎症環境下にあってもTregはナイーブな状態のまま

  • IRF4を全ての細胞でKOするとTregはナイーブな状態のまま

筆者らは、タモキシフェン投与依存的にTregのみでIRF4をKOするために、

Irf4-FL x Foxp3-Cre-ERT2のマウスを作製しました。

まずは、タモキシフェンによってIRF4の発現が低下することを確かめました。

TregでのIRF4の発現量を調べるために、

mRNAの量をqPCRで測定したところ、発現量はノックアウトによって50%程度しか減っていませんでした。

これは、Tregの生存にIRF4が必要であるがゆえに、

ノックアウトによって、IRF4がまだ残っているTregだけが増殖してしまったことが原因だと考えられます。

(変な例えで恐縮なのですが)突然トイレットペーパーがスーパーから無くなったら、

今自分が持ってる分を大切にする、みたいな圧力が働いているイメージです。

IRF4ノックアウトによってTregの抑制能が低下する

次に、筆者らは腸管の基底膜におけるTregを解析しました。

今まで脾臓とリンパ節しか見てこなかったのですが、

腸管基底膜のTregはほとんどCD44highで、TCR刺激が最近入ったものばかりなので、

IRF4のKOによる影響をよりクリアに見ることができます。

確かに、TCRをKOした方がTregが少なく、IRF4をKOした方がTregが少ないという結果が出ており、

TCRとIRF4の相関関係が綺麗に現れています。

リンパ節で比較しても、IRF4のKOによって、

CD44high Ki67+の活性化して増殖したTconvは増加していましたし、

脾臓で比較しても、IRF4のKOによって、

TconvのIFN-γ, IL-4, IL-13発現量が増加していました。

Tregの数が減ったり、Tconvの免疫反応が強くなったりと、

IRF4のノックアウトによってTregの抑制能が低下していることを反映するような結果になっています。

ノックアウトが不完全であってもこのように一部で差が見られたため、

筆者達の主張したいことは示すことができました。

本当は良くないのですが、discussionは省略させてください。

ひとまずこの論文の紹介はここで終わります。

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