ラスパイレス指数とパーシェ指数をわかりやすく解説!計算方法と使い分け【統計検定】
こんにちは、青の統計学です。
今回は、経済指標のラスパイレス指数とパーシェ指数について扱いたいとおもいます。
統計検定だと、統計応用の社会科学分野で出題されたり、2級で出題されたりと結構幅広く使われる印象です。
計量経済学系のトピックだとこの辺りがおすすめです。
ラスパイレス指数とパーシェ指数:物価変動を読み解く
物価変動は、我々の日常生活や経済活動に深く影響を与えます。特に、食料品やエネルギー価格の変化は、家計の支出に直接的な影響を及ぼすだけでなく、経済全体にも波及効果をもたらします。
暗記するのもいいですが、「物価の変動を読み解く」という指数のモチベーションも理解する方が忘れにくいです。
ラスパイレス指数
ラスパイレス指数は、物価水準の変化を測定するための指標の一つです。
この指数は、基準時点の数量を用いて価格や数量の変動を測定する方法です。この指数には、ラスパイレス価格指数とラスパイレス数量指数の二つが存在します。
ラスパイレス価格指数
ラスパイレス価格指数は、基準時点の消費量や生産量を固定して、その後の時点での価格変動を測定します。これは「基準時点での消費パターンを基準に、物価がどれくらい変動したか」を見る指標です。
これは、基準期間の消費量を固定し、現在の期間の価格を用いて計算されます。
この手法により、基準期間に消費された商品・サービスの量を基準として、現在の価格でその量を計算することで、物価水準の変化を測ることができます。
基準時点を${0}$、比較時点を${1}$とすると、ラスパイレス価格指数(${P_L}$)は次のように表されます
$${P_L = \frac{\sum_{i=1}^n p_{it}q_{i0}}{\sum_{i=1}^n p_{i0}q_{i0}} \times 100}$$
- ${q_it}$:比較時点での数量
- ${p_i0}$:基準時点での価格
- ${q_i0}$:基準時点での数量
- ${p_it}$:比較時点での価格
この指数の欠点は、基準期間の消費量を固定するため、消費パターンの変化を反映しない点です。
例えば、ある商品が大幅に値上がりした場合、消費者はその商品の消費量を減らす可能性があります(この選択は合理的ですよね)が、ラスパイレス価格指数ではその影響が反映されません。
さて、まとめです。
ラスパイレス価格指数の特徴
基準時点の数量を用いるため、価格が上がった商品やサービスが過大評価されやすいという特徴があります。
つまり、基準時点の消費パターンを固定したままの価格変動を反映するため、消費者が高価な商品を避けて安価な商品に置き換えるといった「代替効果」を考慮しない指標です。
ラスパイレス価格指数の具体例
ラスパイレス価格指数の計算は、以下のように行われます。
2023年を基準年とし、2024年の物価水準を算出する例を示します。
商品 | 2023年価格($p_i^0$) | 2023年数量($q_i^0$) | 2024年価格($p_i^t$) |
米 | 100 | 10 | 120 |
パン | 50 | 20 | 60 |
牛乳 | 80 | 15 | 90 |
$${L_p = \frac{(120 \times 10) + (60 \times 20) + (90 \times 15)}{(100 \times 10) + (50 \times 20) + (80 \times 15)} \times 100}$$
$${= \frac{3300}{3000} \times 100 = 110}$$
この結果から、2024年の物価水準は2023年と比較して10%上昇したことが分かります。
ラスパイレス数量指数
さて、価格指数がよく出ますが実は価格を基準年に固定した数量指数というものもあります(パーシェ指数に関してもそう)
この指数は、「基準時点の価格で計算した場合、数量がどれくらい変化したか」を見る指標です。
$${Q_L = \frac{\sum_{i=1}^n p_{i0}q_{it}}{\sum_{i=1}^n p_{i0}q_{i0}} \times 100}$$
- ${q_it}$:比較時点での数量
- ${p_i0}$:基準時点での価格
- ${q_i0}$:基準時点での数量
- ${p_it}$:比較時点での価格
ラスパイレス数量指数の特徴
基準時点の価格を用いるため、数量の変動に対する影響をより敏感に反映することができます。
ただし、基準時点の価格水準に依存しているため、後に価格構造が大きく変わった場合には、数量変動の実態と乖離が生じることがあります。
パーシェ指数とは?
パーシェ指数は、比較時点の数量を用いて価格や数量の変動を測定する方法です。
パーシェ指数にも、パーシェ価格指数とパーシェ数量指数の二つがあります。
パーシェ価格指数
パーシェ価格指数は、比較時点の数量を基準として価格変動を測定します。これは「比較時点での消費パターンを基準に、物価がどのように変動したか」を見る指標です。
$${P_P = \frac{\sum_{i=1}^{n} p_{it}q_{it}}{\sum_{i=1}^{n} p_{i0}q_{it}} \times 100}$$
- ${q_it}$:比較時点での数量
- ${p_i0}$:基準時点での価格
- ${q_i0}$:基準時点での数量
- ${p_it}$:比較時点での価格
パーシェ価格指数の特徴
比較時点の数量を基準とするため、消費者が高価な商品を避ける傾向(代替効果)をある程度反映することができます。
しかし、比較時点での数量を用いるため、時点ごとの消費構造の変化をより敏感に捉える一方で、基準時点との直接的な比較が難しくなることがあります。
パーシェ価格指数の具体例
パーシェ価格指数は比較年の消費パターンを反映するため、以下のように計算されます。
商品 | 基準年(2020年) | 比較年(2021年) |
A | 価格:100円 数量:10 | 価格:120円 数量:12 |
B | 価格:200円 数量:5 | 価格:250円 数量:6 |
この場合、2021年のパーシェ指数は以下のように計算されます。
$${P_p = \frac{(120 \times 12) + (250 \times 6)}{(100 \times 12) + (200 \times 6)} \times 100 = 120}$$
この結果は、2021年の物価が2020年と比べて20%上昇したことを示しています。
パーシェ数量指数
パーシェ数量指数は、比較時点の価格を基準として数量変動を測定します。
この指数は、「比較時点の価格で見たとき、数量がどの程度変化したか」を捉えます。
$${Q_P = \frac{\sum_{i=1}^n p_{it}q_{it}}{\sum_{i=1}^n p_{it}q_{i0}} \times 100}$$
- ${q_it}$:比較時点での数量
- ${p_i0}$:基準時点での価格
- ${q_i0}$:基準時点での数量
- ${p_it}$:比較時点での価格
パーシェ数量指数の特徴
比較時点の価格に依存するため、現時点の経済環境や価格水準に対する数量の変化を敏感に捉えます。
ただし、基準時点での価格変動の影響を受けにくい反面、比較時点の価格水準に大きく依存しているため、過去のデータとの一貫した比較が難しい場合もあります。
ラスパイレス指数とパーシェ指数の比較
ラスパイレス指数とパーシェ指数は、基準とする時点が異なるため、物価や数量の変動の捉え方が異なります。
パーシェ指数は比較時点の数量を基準とするため、消費者行動の変化を反映しやすくなりますが、比較時点の価格構造に影響されやすいです。
ラスパイレス指数は基準時点の数量を基準とするため、価格上昇の影響をやや過大に評価する傾向があります。
ここまでで、どんな状況だとどちらの指数が適切か、というのがわかってきたのではないでしょうか?例えば、食料品価格の変動を測定する場合、消費者の食生活の変化が大きい場合はパーシェ指数が適しています。一方、消費パターンの変化が小さい場合は、ラスパイレス指数が適しています。
統計検定1級だと、各指数の関係を使った式変形や、特定の場合における指数同士の大小関係などが扱われるので、本記事の内容をしっかり理解しつつ、問題に取り組んでみてください。